出石に来たら人生の迷子時期を思い出した
- Kaaisan
- 2024年2月7日
- 読了時間: 4分
兵庫県豊岡市の出石に来た。
こじんまりとしていて、主要なスポットには歩いていける。
私がまず行ったのは宗鏡寺(すきょうじ)、別名「沢庵寺」
一時荒廃していたお寺を沢庵和尚(出石出身なんだって)が再興したことで、こう呼ばれるみたい。
お漬物のたくあんは、もともと「貯え漬け」と呼んでいたのを沢庵和尚が徳川家光に出したところ気に入られて「名前がないなら沢庵漬けと呼ぶべし」ということになったらしい。ちなみにこの文章を書いていて「あれ、たくあん?たくわん?」と思ったんだけど、どっちも正しいみたいで安心した。
拝観時にもらったパンフレットには宗鏡寺の楽しみ方が書いてあって、本尊に参ったら縁側で坐禅する、と書かれていたので少し実践してみた。最近、ひとりの時間には絶えず携帯を眺めていた自分を反省して、静かにその場を五感で感じる時間は体に染み入った。
雪も残る庭園だったけど、静かに坐禅してると体もぽかぽかしてきたのが印象に残っている。

程よく街を散策できたので、いよいよ出石といえばの「蕎麦」の時間。
歩いていてもお蕎麦屋さん、向かいにお蕎麦やさん、2軒先にお蕎麦屋さん・・と、とにかくお蕎麦だらけの町。どうやら人口12,000人の町に40軒を超える蕎麦処があるらしいよ。
どうやって事業が成り立ってるの?と思っちゃうし、どこで食べたらいいの?と迷子だったんだけど、そういえば昔どこかで見てピン留めしていた「近又」があるじゃん、と行くことに。
開店前(今日は10:30頃開店だった)から名前を書いて待っている人がいたくらいだったから待ちを覚悟で行ったんだけど、11時過ぎという早い時間だったおかげで比較的スムーズに入れた。
出石そばの特徴は、小皿に分けて提供されること。
「一人前が5皿スタートだけど、何皿にします?」と注文を聞かれる。
あとからも追加はできるので、私は一旦6皿でスタート。
面白いのが、ここでは大人は20皿食べたら 小学生以下は15皿食べたら「手形」をもらえるということ。しかもこの手形、5つ集めると、当日から1年間無料でお食事ができるスペシャル手形がもらえるんだって。

薬味を入れたり、とろろや生卵があったりと、味を変えながら楽しめるので 飽きることもなく。私は結局8皿食べて1,300円くらい。
他のお客さんを見てると、手形をもらっている人やお会計時に実際に無料になっている方が結構いて、そのリアリティがまた良かった。
このシステム、できる限り食べてみようと注文する動機が作れるし、手形を集めるのがリピートのきっかけになるし、スペシャル手形を持っていても無料になるのは本人ひとりだから家族や友人の分は売上になるし。メニューはこの蕎麦だけだから「何皿頼みますか」とオペレーションもシンプル。すごく良いな・・・などと考えてしまった。
お腹もいっぱいになったし、ちょっとのんびりしよう とたどり着いたのはミチルという施設。高校生の居場所を作ろうと、地域おこし協力隊がつくった場所に併設されたカフェのよう。実際に夕方には制服を着た高校生も来店していて(土曜日なのに!)笑みがこぼれた。
本でも読みたい気分、と思いつつ自分の本は持ってこなかったので、店内に本が置いてあったのが嬉しかった。その中でふと目にとまったのが「やりたいことを全部やってみる」という本。
最近はこういう本とは縁がなくなっていたのだけど、人生迷子だった社会人の2年目にはよく手にとっていた。

当時の仕事は全く自分に合っていると思えず、でも他に何がしたいという思いもなく、起業に憧れを持っていた私は、わざわざ仕事終わりに福岡から東京まで行って、起業セミナーにも参加したことすらある。
生き方、仕事の仕方、投資についてなど、色んな本を読んでみたけれど、特に何かに繋がりはしなかった。(ちなみにその頃読んでいた本の一部はこちら)
「あなたの道はこれだよ」と誰かが教えてくれさえすれば、努力はどれだけでもする覚悟はあった。でも選択肢は無限にあり、どこまでやったら見切りをつけて他に挑戦すべきなのかも分からない。まさに「暗中模索」という気分で、結構辛かった。
そんな日々を乗り越えて自分のやりたいことが分かるようになってきた今、こういう本を開いてみると「私ならどんな風に書くかしら」という視点で本を見ている自分に気づき、少し成長を感じた。
まさか出石に来て、そんな時期のことを思い出すことになるとは思っていなかったけど。
改めて、年齢や人生のフェーズが違うと視座が変わって、同じようなものを見ても見えるものが変わってくるものなんだということを実感した。
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